プロジェクトストーリー タイガーハイクリンボード開発物語 3
真の営業力が問われた
しかし営業の現場では混乱が起こった。通常の石膏ボードより高価なハイクリーンボードは、さっぱりといってよいほど売れなかった。いくら熱心に営業が商品の特徴や機能の素晴らしさ説いても、反応はなかった。こんなことは、吉野石膏の歴史でもほとんどない出来事だった。
PHOTO:高橋宏輔 吉野石膏といえば、石膏ボード業界で78%と圧倒的な市場占有率を誇るトップカンパニー。商品はある意味黙っていても売れる。吉野石膏の営業担当がお客様の所へ出向けば、少なくとも門前払いはない。会って話を聞いてくれる。「そんな奢りがあったのではないか」。発売当初の苦労を、相模原営業所の高橋は語る。「我々は、ハイクリンーンボードという、未知の高機能商品を市場に持ち込むことで、初めて営業という仕事の原点を思い知らされた感じがします」。
もちろんこれまでも、吉野石膏の営業担当はただお客様の所へ出向いていたわけではない。そんなことで売れる時代は、とっくの昔に終わりを告げている。問屋や商社、あるいはその先の工務店やハウジングメーカー、ゼネコンの現場が、いかに収益が上がるかに対して、英知を絞った提案を繰り返している。しかし、その市場は先輩方が苦労を重ねながら築き上げてきた、ある意味では確立された市場とも言えた。

ハイクリーンボードは、市場がまったく見えなかった。環境対策された商品ということからも、ターゲットは学校や病院、官公庁、あるいは住宅メーカーがあがっていた。しかし、建設コストをプッシュする製品は、たとえそれが環境改善に効果的な製品であっても、市場は受け入れてくれない。世は、低コスト化時代なのだ。
PHOTO:横山 至
PHOTO:安宅勇二
PHOTO:高橋宏輔 将を射んとすれば先ず馬を射よ
「シックハウス対策」という見えにくい機能性を顧客に納得させるには、まず営業担当自身がその意義と効果を学ばなければならない。
「技術指導を受けたり学会の発表データを見たりして自分なりに勉強しましたが、それをお客様に説明するとなると、一度噛み砕いてわかりやすくしなければならない。シックハウス対策の有効性をわかっていただいても、単純に単価が上がるのを嫌がるお客様も多いので、説得の仕方には苦労しました」(高橋)

最初は代理店へのPR活動から始めたが、単価を理由になかなか納入してくれない。そこで次に、販売店の担当者と同行して一件一件の工務店へ売り込みに行った。手間も時間もかかる方法だが、建築の現場を説得するのが最も効果的だと判断したのだ。売上を伸ばすには、まず建築現場がその商品の価値を認めてくれるか、良いと思ってくれるかどうかだ。また、大手工務店の本社への営業も強化した。説得材料は、「機能対コストの安さ」「性能の高さ」そして「吉野石膏ならではの運送体制」である。
そして少しずつ販売数は伸びてゆき、高橋の担当エリアで大きな成果が出たのは発売から1年後のことだった。山梨県に本社を置く準大手のハウジングメーカーがハイクリンボードを全面的に採用してくれたのだ。
「お客様の中には、付加価値商品は高いという先入観がある。それを乗り越えるためには、高度な営業技術が必要だし、従来製品の10倍くらいの手間がかかります。それでもハイクリンボードは、当社の将来を担う重要な商品と認識していますから、今後もさらに力を入れていくつもりです」「またこの商品を通して、改めて営業の仕事の意味を見つめ直す良い機会になったと感じます。
PHOTO:横山 至
市場がゼロベースの商品を、どのように売っていくのかを考えることが、これほどまでに苦しい仕事なのかを味わいました」(高橋)
ハイクリンボードの売上は、全商品の中でまだわずか数%にすぎない。しかし、環境意識の高まりと全社を挙げての努力によって、やがて業界スタンダードとなる日を我々は目指している。
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