研究所長インタビュー 取締役 技術研究所長 横山 至 石膏ボードの可能性を具現化し 新たな市場への進出を目指す

吉野石膏の研究開発体制 「研究」と「開発」の緊密な連携が強み

 研究開発機関には「技術研究所」と「商品開発部」の2部門があります。技術研究所は、「石膏ボードグループ」、「石膏プラスターグループ」、「工業用焼石膏グループ」、「ジョイント・コンパウンドグループ」、「分析グループ」などに分かれており、素材そのものにさまざまな機能や特性を持たせるための研究開発を進めています。一方、商品開発部では、すでに完成している製品の機能を、耐火、遮音、耐力の面などでより効果的に発揮させるための工法や構造の開発を行っています。
 「タイガースクエアトーン・D」「タイガースクエアート」の開発を例に挙げてみましょう。同プロジェクトは「技術研究所」「商品開発部」のほかに、「エンジニアリング部」「製造担当 工場」も加わったプロジェクトチームにより進められました。技術研究所の使命は、多数並んだ四角の孔を有してもボード全体の強度が維持され、施工後にだれないこと、さらに不燃材料としての性能を確保すること。部門横断で結成されたチームの力で、納得のいく成果を出し、技術研究所としても代表的なプロジェクトとなりました。

 「技術研究所」と「商品開発部」の両部門間で定期的に、互いが取り組んでいる研究や業務に関する情報交換を行い、要望を出し合って連携を図る。素材寄りの研究力と商品寄りの開発力、この両輪がかみ合うことで、スピーディーで内容の濃い研究開発が展開していくのだと考えています。

今後の方向性 「環境」と「コストダウン」、そして石膏ボード以外のテーマも

 従来、石膏ボードはメーカーによって異なる特徴があったわけではなく、顔のない商品、つまりどのメーカーでも同じ商品だという位置付けでした。しかし、吉野石膏はボードにさまざまな機能を持たせ付加価値を高めることに成功し、他社製品では替えのきかない競争力のある商品開発を行ってきました。背景には時代の要求もありましたが、それ以上に会社としてニーズに応えうる実力をつけてきたことが大きいと思います。
 現在、研究開発における最重要テーマは、「環境配慮」と「コストダウン」。これはすべての案件に共通するベースとなっています。そのうえで、石膏ボードの使用部位拡大に向けた研究開発を進めています。具体的には、内装表面材や準外部材、最終的には外壁下地にも使える石膏ボードの開発です。水分に弱いという弱点を改善することで湿度が高い玄関先や水まわり、住宅以外であれば、エレベーターシャフト用の石膏ボードなどの開発に取り組んでいます。そのほか、ボード表面の被覆材を紙からグラスファイバーティッシュに替えることで耐震性や屈曲性能を高めた「タイガーグラスロック」などのように、素材の変更や性能の向上によって適用範囲を広める開発も行っています。

 研究テーマの種は、現場の声を肌で感じている営業からの提案や特許情報、素材メーカーや商社からの情報、「無機マテリアル学会」の学会誌、世界中のせっこう関連の技術情報をまとめた業界誌などにそのヒントが潜んでいます。可能な限り幅広く研究対象にするように努めていますが、技術的根拠や研究コストを鑑みて選別することが重要です。研究テーマの見通しが立ってきた段階で、協力企業や大学などと技術提携し、プロジェクトの精度をより高めていきます。
 また、事業領域の拡大を目的としたM&Aを活発に行っており、ガラス繊維で補強したセメント系の外・内壁材「デラクリート」や化粧吸音板「ソーラトン」をはじめ、これまでの石膏ボードの適用範囲を越えた商品は、さらなる顧客開拓に大いに役立ってくれることでしょう。人材の成長という観点からも、こうした変化は新たな知識を修得するチャンスであり、良い刺激になっています。

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人材育成 製造現場での経験と、貪欲な好奇心が成長の糧

 以前は、研究職を「製造現場で指揮をとれる人材を育成するためのステップ」と位置づけ、研究所を経て製造現場へ出て行くというキャリアパスでした。しかし、現在では社内でも研究開発の重要性が再認識され、研究職に専念するキャリアプランへと移行しつつあります。とはいえ、現場での業務経験は研究開発を行う上でも非常に参考になるため、研究所で1〜2年働いた後、3〜6年ほど現場で経験を積むというように、早い段階で現場に出るキャリアパスを考えています。ただし、あくまでケース・バイ・ケースですので、研究員それぞれの適性を見極めながら決定しています。
 日頃、若い研究員と接していると、仕事の正確性や真面目さ、自らを高めたいという向上心にはつくづく感心しています。しかし一方で、「もっと貪欲であれ!」と感じることも少なくありません。育ってきた時代や環境が私たちとは異なることは承知していますし、一朝一夕で身につくことでもないでしょう。ただ、もっと失敗を恐れずに積極的に物事にぶつかって欲しいと思っています。経験がないからこそ挑戦できることがある。これは若い世代の特権です。

 仕事を進めていく中では、必ず何らかの壁にぶつかります。その壁を突破するためには、思考を大きく転換し柔軟な発想で取り組まなければなりません。そこで皆さんにアドバイスしたいのは、仕事以外にも好奇心を持って造詣を深めて欲しいということです。日頃からたくさんの人と出会い、多くのことを経験していれば、自ずと奥行きのある人間になると考えています。加えて吉野石膏では、大学での専攻分野によって門戸を狭めることはしていません。無機化学・建築系に限らず、有機・高分子化学や設計・デザインなど、幅広い分野の人材を登用し研究開発力の向上を図っていきたいと思っています。

横山 至(よこやま・いたる)
取締役 技術研究所長

1974年入社 理学部 化学科卒
技術研究所、日本ソーラトン等を経て2011年より再び技術研究所へ。
学生時代は県大会で優勝したほどの腕前を誇るテニスをはじめ、
スキー、バドミントンなどもこなすスポーツマン。司馬遼太郎などの歴史小説を好む。

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